結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 遅い朝食のあと、明日からの旅行に備えて買い物へ出かけた。長時間のドライブになるので、飲み物やお菓子も買うつもりだ。

 年末年始は、八木沢さんが休みを取りやすいらしく、二人で旅行の計画を立てている。「沖縄や海外でもいいですよ」と言われたが、そうなると私が出すお金より彼の負担がかなり大きくなりそうだったので、近場の温泉地である熱海を選んだ。
 両親の新婚旅行先が熱海だったと聞いていたから、いつか行ってみたいと思っていた。

「梅にはまだ早いですが、少しでも咲いてるといいですね」
「本当に、二部屋じゃなくてよかったんですか?」
「一部屋でいい……です。やめてください、思い出したら恥ずかしい……」

 スーパーマーケットのお菓子コーナーで突然そんなこと言わないで欲しい。私から部屋に押しかけた初めての夜を思い出すと、恥ずかしすぎて隠れたくなる。耳が熱い。きっと顔が赤い。
 八木沢さんは「とても大胆でしたよね」と、からかって楽しんでいるので、仕返しにさっき彼が買い物かごに入れた眠気覚ましのガムを、もっと辛口にしておいた。


 飲み物やお菓子、今日の夕飯の食材も買い込んで、ゆっくり歩いてマンションに戻る途中、近所の歯科医院の扉に休診の張り紙があったので、つい立ち止まってしまった。かかりつけの病院も今日から休診だったはず。桂先生が八木沢さんに会いに来るかもしれない。そう思うと不安になる。早く東京を離れたい。


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