結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 カメラの位置を計算しているかのように、少し斜めの角度で綺麗に上半身だけが映っている。

「桂先生……」

 モニター越しでもわかる美人。かつて見た、上海での写真よりも艶っぽい。(やっぱり)という納得と、(すぐに実行したんだ、すごいな。私だったら決心するまで、きっと時間がかかる)というある種の尊敬と、(来て欲しくなかった)という正直な気持ちがない交ぜになって、呼吸がうまくできない。

(お願いだから帰ってください。八木沢さんが戻る前に帰って……!)
 
 こんなこと願うなんて本当に自分勝手だ。会いたい人には会いに行ったほうがいい、と背中を押したのは自分のくせに。

 エントランスからの呼び出しにこちらが応答しなければ、一定の時間が経つと切れてしまう。画面がふっと消えて、不在時の来客を示す青いランプが点灯した。
 動けないまま、その場に立ち尽くしていると、諦めなかった彼女がもう一度インターホンを鳴らした。
 その音にびくりと肩が震えた。向こうからは見えないはずなのに、動かない私が責められているみたいで怖い。

 早く帰って、と祈るように画面を見つめていたら、時間が経って再度呼び出しは切れてしまった。
 きっと彼女は諦めて帰っただろう。……これで、八木沢さんは会いたかった人に会えなくなる。

 八木沢さんは、時折寂しそうな顔をする。彼はずっと何かを求めているのに、同時に諦めている。

 だめ、やっぱり引きとめないと!


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