結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 桂先生は、美人過ぎて、やっぱり今日も目立っていた。この空間が彼女のために用意されたかのようだ。
 しばらく見とれていたら、私に気づいた彼女が笑って手を振り立ち上がる。まるで待ち合わせしていた友人を見つけたかのような、屈託のない笑顔だった。その自然さに戸惑った。
 私は覚悟してここに来たのに、彼女にとっては取るに足らないことなのかな。

 約束の時間よりも前だったが、会計を済ませてこちらへ来ると、彼女が言った。

「もう着いてたのなら、声かけてくれてよかったのに。上のステーキハウスを予約してるから。肉食べよ」

 あまりに唐突で、返事に困った。ランチタイムならいいと言われたが、一緒にランチするなんて予想外だった。しかも彼女が全額払うと言う。

「え……食べませんよ」
「そう? いいよ、別に。ビュッフェだから好きにして」

 席に案内されたあと、好きにしてと言ったくせに「お料理取りに行こう」と連れて行かれて、「貧血予防なら、これとかこれ」と、取ろうとした料理に横から口を出してきた。

「桂先生って、わりと変な人ですよね」
「そうかな? ところで『先生』はやめにしない? 雅姫でいいよ」

 そう言って笑う彼女には、揺るぎない自信と余裕があった。私は振り回されてばかりだ。
 結局、自分の好きなものを少量取ってきたが、食事はさすがに美味しかった。桂先生――雅姫さんは、私のことなんか歯牙にも掛けない様子で、元気よくもりもり食べている。生命力が強い。


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