結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「わかりました。あなたが言うなら、そうしましょう」
その答えを聞いて、急に目の前が真っ暗になったような気がした。まるで地面が無くなってしまったかのようで、立っていられない。自分が望んだことだったのに。
八木沢さんが温かく包んでくれたから、ずっと抱えていた私の寂しさも、氷がとけるように小さくなって、いつの間にか消えていた。
八木沢さんに抱きしめられると幸せ。その彼が、他の誰かに触れるのを想像するだけで、心臓が潰れてしまいそう。
でも、私の幸せはいらないから、八木沢さんには幸せになってほしい。
彼がずっと待ち望んでいた人が来たのなら、私はいないほうがいい。
そして......いなくなるなら、優しい彼が心配しなくていいように、淡々と別れたほうがいい。
ふらついたのを悟られないようにと、テーブルに手をつきながら声を絞り出した。
「……十五階の鍵も、お返しします」
大切にしていた合鍵も、すぐ渡せるように準備していた。
テーブルに置くと、八木沢さんはそれを受け取り、それ以上何も言わずに部屋を出て行った。
ほら、やっぱり、引きとめないでしょ?
これで収まるところに、収まるから、大丈夫。
自分にそう言い聞かせる。これで大丈夫。
胸が痛くて、涙が溢れてとまらなくて、声を出さないように手で口を押さえた。
また、一人になってしまった。
何もしたくない。息をするのも嫌だ。
このまま、静かに消えてしまえたらいいのに。