結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
『東梧が口をきかない。朝から「ああ」以外喋らない。仕事はしてるけど心ここにあらずで、なんかこれ、昔見たことあるんだよね。すげえ嫌な予感するから和咲ちゃんに電話した』
切羽詰まったような口調で、そう話す槙木さんは、いつもより小さな声だったから、仕事を抜け出しているのかなと思った。短く答えて早めに電話を切ろう。
『東梧となんかあった?』
「……特になにも」
『なんかあったんだな。東梧に異変があるのに、心配しないなんて和咲ちゃんらしくない』
槙木さんに下手な演技は通用しなかった。これまでお世話になったお礼も言わねばと思って、槙木さんには事実を伝えることにした。
「昨日、私からお願いして、別れました」
『はっ!? なんで? 嫌になった? あいつ、なんかした?』
「だって、八木沢さんが想い続けているのは雅姫さん、ただ一人だけですよね?」
言葉にすると、また胸の奥が痛くなる。
もしラジオ放送だったら放送事故になるくらいの長い時間、槙木さんは沈黙し、そして低い声で言った。
『なんで和咲ちゃんが雅姫のこと知ってんの?』
「全部聞きました」
『俺が知らないうちに何があった?』
思い出したくない。考えたくない。言葉に詰まって泣きそうになったから、電話を切ろうとした。
「ごめんなさい、これから出かけるところなので切りますね」