結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

『待って、少しだけ質問させて。雅姫に会った?』
「はい」
『あの女、帰ってきたのかよ! ……ごめん。なんか言われた?』
「はい……別れてほしい、東梧を返してって」

 意味分かんねえ、と呟いた槙木さんは、苛立っているのか早口になっている。

『それで別れるの? 東梧本人の気持ちは?』
「別れたいって言ったら、『わかりました』って。それだけです。……もう私が無理なんです。ずっと一緒にいたいと思ってしまった。約束がほしいと思ってしまった。そんなこと願っちゃだめなのに。八木沢さんは雅姫さん以外と結婚するつもりなんかないのに……」

 言ってしまった。言えなかったことを。
 言ってはいけないことを。
 結婚したくない人に、約束を求めるなんて。
 そんなこと、願ってはいけなかったのに。

『それを東梧に言って……』
「私は槙木さんと八木沢さんが話してるのを聞いたんです! 槙木さん酔って覚えてないかもしれないけど、クリスマスに! 私とは『結婚できない』って、八木沢さんがはっきり言ってたじゃないですか……!」

 槙木さんを責めるような言い方をしてしまった。
 でも、頭がぐちゃぐちゃで気遣いなんかできなかった。申し訳なくて、「ごめんなさい」と「ありがとうございました」とだけ伝えて電話を切り、逃げ出したくて家を出た。



< 198 / 264 >

この作品をシェア

pagetop