結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
新宿駅は朝夕のラッシュ時以外でも人が多い。駅に着いてすぐ、人にぶつからないような場所を選んで電光掲示板を見上げた。
品川駅か東京駅まで行って、東海道新幹線に乗ろうかな。大宮駅まで行って、北陸新幹線もいい。
結局、小心者の私は乗り慣れている中央線で東京駅に行くことにした。
中央線は、この時間帯でも五分も経たないうちに快速か特快が来る。たくさんの人が乗り降りして、次々とめまぐるしく風景が変わっていく。ホームの柱にもたれて、それらを眺めながら、何度も乗るのを躊躇ってしまった。
いつまでもぐずぐすしていたら、決心が鈍ってしまいそう。「もう絶対次の電車に乗る! 混んでても乗る!」と決めて一歩踏み出した瞬間、誰かに腕を掴まれた。
その感触が、あまりにも懐かしくて、時が止まった。
振り返ったら、濃紺のネクタイが目に映った。結び目がとても丁寧。
そう、私は彼が几帳面なのを知っている。この手が優しいのも知っている。
少し長めの前髪が乱れて揺れて、その懸命な姿を綺麗だなと思った。
会えて嬉しい。離れたくない。
好きな人が目の前にいる。考えるよりも先に体が動いていた。