結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 あの日、八木沢さんに連れて行ってもらった東南口の割烹料理屋は、昼の時間帯は手頃な値段のランチを提供している。人気店なので、いつも長蛇の列が出来ている。
 そこで二人で相談して、東口にある老舗洋食屋へ行くことにした。提供が早いので、客の回転も早い。そんなに待たずに入れるだろうと行ってみたら、ちょうど開店前だった。

 レトロな外観、内装やテーブルなどにも年季が入っているが、丁寧に手入れされているのがよくわかる。看板メニューはロールキャベツ。甘いキャベツに、たっぷりのお肉が包まれている。八木沢さんは定番メニューを選び、私はカレーと迷って、まだ食べたことのないクリームコロッケにしてみた。私がサクサクの衣を楽しんでいると、八木沢さんが呟くように言った。

「和咲さんにはそうやって、楽しそうに笑っていて欲しいです。あなたがこんなに思い詰めたのも雅姫のせいですよね。僕は彼女を許さないので、和咲さんは心配しないでください」
「は? ……い、いえ、真に受けて思い込んだ私も悪いので……あの、お手柔らかに……」

 微笑みながら、有無を言わせない低い声で「和咲さんの素直さにつけ込むような真似を……許しません」と返されたので、反論するのをやめておいた。
 雅姫さんはそう簡単に諦めるタイプには見えないけど、同じくらい八木沢さんも頑固だと思う。
 ただ、私は彼女を憎みきれない。好きにもなれないけど。


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