結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「新宿もいいですよね。でも、急に言われても決められないです、ごめんなさい」
「そうですね、すみません。気が急いて……あ!」
「なんですか?」
「近いうちに僕の家族に会ってもらえますか? 父親はもう鬼籍に入っていて、母親と兄姉だけですが。嫌なら別にいいです」
「嫌じゃないですよ」
私が笑うと、彼が安心したように微笑みながら立ち上がった。
これまで八木沢さんは、あまり自分の家族の話をしなかった。私に親族がいないからだと思う。私は一人ぼっちで気楽だが、八木沢家にとっては姻戚が増えるわけだから、当然ご挨拶は必要だろう。
具体的に考え始めたら、不安になってきた。真臣の両親のように歓迎してくれない可能性もある。そうなると八木沢さんに申し訳ない。
会計をすませて店の外に出ると、空は澄み切って風が冷たかった。歩いて帰るのかなと見上げたら、どうやらさっきの話が続いている。
「あとは……」
「まだなにか?」
やっぱり結婚って大変だ。やることがたくさんある。結婚を面倒に思う人の気持ちはよくわかる。
「結婚式をしたいです」
「えっ!?」
なぜか八木沢さんと結婚式のイメージが結びつかなかった。私自身、一度諦めたから、自分がまた結婚式の準備をするなんて想像しておらず、婚姻届を出すだけだと勝手に思い込んでいた。