結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

「知らないうちに、そんな噂になってたのか!」
「違うんですか?」
「あいつは未婚だし、相手も死んでねえよ。どっちかと言えば、死にそうだったのはフラれた八木沢のほうだ」

 勝手な想像で、訳のわからん噂になっていたようだ。だが、それも仕方ないかもしれない。もう十年以上前のことだから。当時を知らない若い世代は、噂の又聞きで正確なことは知らないのだろう。

 あの女と別れたあと、東梧は明らかに集中力を欠いて、元々寡黙だったのが、ますます無口になっていた。いまはもう局長になった当時の上司が、省内の試験を受けて海外留学するよう勧めたのは、環境を変えて視野を広げてほしかったからだ。それはつまり、あいつに潰れてほしくなかったから。

 何年経っても、あの女が鮮烈に記憶に残っていたのは理解できる。忘れたくても忘れられなかったのもわかる。いつも一緒にいて、誰が見てもお似合いだった。誰も割り込めなかった。

(当時は、俺もお似合いだと思っていたんだよなー……)

 若い頃の東梧は今よりもっと服飾や持ち物に金をかけていた。いわゆる良家育ちの坊ちゃんで、あの女も両親が医者で金持ちだから、二人は何をするにも派手だった。
 でも俺から見ると、今の東梧の方が自然だと思う。


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