結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

新婚さん


 重くて温かい。
 目が覚めると、私は八木沢さんの腕の中にすっぽりと包まれていた。
 昨夜、リビングでこれからの相談をしていたはずだけれど、途中から記憶がない。
 前日にほとんど眠っていなかったせいで、いつの間にか寝てしまったようだ。

(八木沢さんが、寝室まで運んでくれたのかな?)

 彼はまだぐっすり眠っているようで、規則正しい呼吸をしているのが私の体にも伝わってくる。それが少しくすぐったい。

 ――昨日、私は八木沢さんと結婚した。

 証人欄を記入するために来てくれた槙木さんが「いつ出すの?」と素朴な疑問を口にして、八木沢さんが「いつでもいいのだから、今から行きましょう」と言ったのだ。区役所はすでに閉庁時間だったので、宿直窓口へ行き、婚姻届と関連書類一式を預けた。
 二人で話し合って、姓は八木沢を選択し、本籍は新宿区にした。

 私の家はここ。
 ここが私の居場所。

 すやすや眠っている八木沢さんが可愛いからつい触れたくなったが、きっと彼も疲れている。
 週末はいつも一緒に過ごしていたから、朝はのんびりすることが多かった。たまに平日に一緒にいても、朝食前に私が一階へと帰っていた。
 でも、今日からは少し違う。
 ここが私の家だから。
 朝食を作らなくちゃ、と思いベッドから抜け出そうとしたら、寝ているはずの彼からぎゅっと抱きしめられた。温かくて大きくて強くて安心する。


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