結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

「おはようございます、東梧さん」

 私がそう呼びかけると、彼は目を閉じたままだったが、頬に朱が差して口角が上がっていく。
 黙って照れているのがおかしくて、笑いながら言った。

「東梧さん、寝たふりやめてください」
「……もっと名前を呼んで」
「東梧さん、東梧さん、おはようございます」
「おはよう、和咲」

 微笑みながら自分の名前を呼ばれて、不意打ちに悲鳴をあげそうになった。ときめいた心臓がきゅっと止まりそう。確かに昨夜、「二人きりの時は『和咲』と呼びたい」と言っていたけど、急に面と向かって呼ばれたら、まだ慣れなくて胸がドキドキする。

「わわ、なるほど……これが破壊力!」
「僕の奥さんは朝から可愛いですね」

 髪にキスされたので、頬にお返しのキスをした。しばらくベッドの中でいちゃいちゃと過ごしていたら枕元のアラームが鳴った。東梧さんは出勤するのだから、いよいよ起きなければ。
 なお、私は旅行するつもりでいたから、工房にはしばらくお休みすると伝えてある。
 結局、出かけるのはやめて戻ってきたけれど、名義変更などの手続きのため、今日はそのままお休みするつもりだ。
 昨夜、槙木さんの奥様から、「まずは免許証を変更すべし!」とアドバイスされた。名義変更した写真付きの身分証がないと、銀行などでの手続きが難しいらしい。

 簡単な朝食をテーブルに並べながら、「毎日、ここで暮らすことになるのか」と、不思議な気持ちになった。
 一階と十五階の超近距離恋愛だったけれど、それぞれの生活は完全に別だった。でも結婚したから、夫婦として協力し合って生活する。合法的な束縛。やっぱり不思議。


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