結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
家事をすませて各種手続きに行く前に、201号室の馬木さん宅を訪問した。「引越しはするが、昨日伝えた場所ではなく十五階へ移る」という説明は、彼女を混乱させてしまうのでは……と心配していたが、馬木さんの理解は驚くほど早かった。
「大家さんと結婚! やっぱりねえ、そうじゃないかって、みんなと話してたのよ」
「……みんな?」
「二人でよく一緒に買い物に行ってたでしょう? マンションの誰かが目撃しては、『今日も仲良さそうだった!』って報告してたのよ」
「こわい! そんなネットワークがあるんですか!?」
201号室の玄関先で、私は突然暴露されたあずかり知らぬ事実に震えていた。
どうやら、管理組合などを通じて仲良くなった方と一緒に、私たち二人と見守っていたらしい。
一部住民のエンターテインメントになっていたとは……恐ろしい。
「あなたといるときの大家さん、本当に楽しそうよ。他人行儀じゃないというか、ありのままというか」
「そうなんですね……知りませんでした」
馬木さんはとにかく喜んでくれて、部屋の奥にいる旦那様と、ついでに通いのヘルパーさんにまで報告していた。当然、例の「見守る会」にも。