結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

「馬木さんご夫妻みたいに、ずっと仲良く一緒にいる秘訣ってありますか?」

「えー? どうだろう、いまだにわからないわ。試行錯誤して、迷いながら生きてる。でも、そうねえ……ひとつ言えるとしたら、なんだかんだ言っても、私は旦那のことが好きなのよ。一緒に暮らしてると幸せなの」

 馬木さんがとても可愛らしい笑顔でそう教えてくれたから、私は心の中で、(そうかあ、好きな人と一緒に暮らすのは幸せかあ……)と妙に納得していた。

 好きな人と一緒に暮らせる。
 これから毎日一緒。
 その日常が、とてもうれしくて楽しい。
 今はまだ慣れなくて、浮かれたりはしゃいだりしているけれど、きっとそのうち生活が落ち着くだろう。そうしたら、馬木さんが教えてくれた「幸せ」が、私にもわかるかもしれない。



 その日、私の最愛の旦那様は、かなり遅い時間に帰宅した。慣れているけれど、日付が変わる頃には眠たくなっていた。
 平日に会うときは、一階で出迎えて夕飯を食べることが多かったから、こんなふうに仕事帰りの彼を十五階で待っているのはもちろん初めて。だから、頑張って名前で呼んでみようと何度も練習した。
 まるで新婚さん。まぎれもなく新婚さん。

「おかえりなさい、東梧さん」

 笑顔も含めて、練習の成果を遺憾なく発揮できたと思う。
 おそらく「ただいま」の「た」であろう。ドアと口を開けたまま、東梧さんが声を失っていた。

「お仕事、お疲れ様でした。東梧さん……?」


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