結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 たっぷり沈黙が続いたあと、ぎこちなく玄関へと入り、私を抱きしめて彼が言った。

「た、ただいま戻りました。すさまじい破壊力……ああ、結婚してよかった」
「お夜食ありますし、お風呂の準備もできてますよ。どっちがいいですか?」
「その選択肢にあなたは含まれないんですか?」
「ないです。明日に差し障ります」

 私がはっきりそう答えると、東梧さんは残念そうに体を離して、「お風呂に入ります。先に寝てていいですからね」と急いで浴室へと行ってしまった。

 寝ていいと言われたが、話したいこともあるので、ベッドでちょこんと待つことにした。

 かつてないスピードで入浴した東梧さんが寝室の扉を静かに開く。私がまだ起きているのを見つけて、ちょっと嬉しそうな顔になっていた。可愛い。

「荷物が少ないので、一階からの引越しは台車を使って自分でやろうかと思ってます」
「そうですか。101号室はそのままにするつもりなので、ゆっくりでいいですよ」

 ちなみに、正式な賃貸契約の前だったので、申し訳ないが申し込んでいたアパートへの入居はキャンセルした。保証人を誰にお願いするか迷っていたのが幸いした。
 時間はかかるが、これまで通り、ここから工房まで電車で通うことになる。


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