結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

「東梧じゃない、こんなところで会うなんて驚いたわ! 買い物?」

 雅姫さんも買い物をしていたのだろう。嬉しそうに東梧さんに笑いかけて、隣にいる私のことをわざとらしく無視している。性格悪い。
 負けないぞーと思って、私から「雅姫さん、こんにちは。お久しぶりです」と挨拶をした。
 機先を制された気分になったのか、彼女の表情が少し変わった。

「……あらー、まだ別れてないの? 別れるって言ってなかったっけ?」

 彼女がそう言ったので、東梧さんが私の肩を抱き寄せる。もう春だからコートは着ていないけれど、隠したいかのような仕草で。

「また隠そうとしてる。そんな警戒しなくていいわよ」
「僕は和咲と別れる気はないよ。もう、僕の妻に関わらないでほしい」

 東梧さんの言葉に、何かを言いかけていた彼女が息を呑んだ。
 少しだけ震える声で、彼女が呟く。自分に言い聞かせるみたいに。

「……そう。そっか、妻かぁ……結婚したんだ……」

 私の目には、いまにも泣き出しそうな哀しい表情に見えた。一瞬だけ。

 深呼吸した彼女は、いつものように不敵に笑った。

「ま、仕方ないか。もう、あのとき十分わかってたから。東梧の気持ちは、これっぽっちも私に向けられてないって」
「あのとき、ってマンションに尋ねてきたときですか?」
「そうよ。東梧はあなたの心配しかしてなかったでしょう?」


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