結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
確かにそうだった。東梧さんは私を見つけて車からおりてきて、私が彼女に追い詰められていたら庇うように隠して……。
「そ、それなのに、『別れろ』ってけしかけたんですか?」
「うん。真に受けて、別れ話して、喧嘩になればいいやと思った」
「性格悪すぎませんか!?」
「えーそう? だって、私があなたに優しくしなきゃいけない理由ないでしょ。敵に塩を送るより、チャンスがあるなら叩き潰したほうがよくない?」
彼女は悪びれることなくそう言った。つい、「そうかも」と思ってしまった。神経が図太すぎる。
絶句している私たちを眺めて、心底嫌そうな顔をしてため息をついていた。
「あー、残念! 雨降って地固まっちゃったか、つまんないの! ……あれ、じゃあ、ここにいるのってブライダル?」
銀座の高級宝飾店の前で、赤い紙袋を持っている新婚夫婦に出会ったら、そう予想して当然だろうと思う。雅姫さんは、「私は絶対に祝福なんかしないからね」と吐き捨てて、それから私に向き直って笑った。
「そうだ、あなたにいいものあげる。私の家にあるから、郵送するね」
「なんですか。本当にいいものですか?」
「あなたも言うようになったわね。めそめそしてるより今のほうがずっと良い顔」
私が言い返したのが面白かったらしく、彼女はとても楽しそうに笑っていた。
でも、もう会話したくないのか、踵を返してから言った。
「届いたら好きにすればいい。私にはただの人物写真だけど、あなたには意味があるでしょうから」
――数日後、雅姫さんから送られてきたのは、大きな封筒に入った家族写真だった。