結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
連絡を取るとすぐに「会いたい」と言ってくださったので、世田谷にある彼のスタジオを東梧さんと二人で訪問することになった。
駒沢公園近くの住宅地の中にあるそのスタジオは、想像よりも小さくて、落ち着いた雰囲気だった。
緊張しながら受付のソファで待っていると、すぐに奥から全身黒い服の男性が現われた。その人は私を見るなり、顔をくしゃくしゃにして笑った。
「本当に和咲ちゃんだ! 全然変わってないね!」
「ああ、思い出しました、『カメラのお兄さん』!」
「そうそう。いつもカメラを持ち歩いてたから、そう呼ばれてた」
当時から背格好が父に似ていて、家族で出かけるときによく一緒だったから、親戚だと思っていた人。「カメラのお兄さん」は、いつも黒い大きなバッグを持ち歩いていた。今ならそれが、機材を入れたカメラバッグだとわかるけれど、当時は「いったい何を隠し持っているんだろう?」と不思議で仕方なかった。
名前と写真だけでは分からなかったのに、声を聞いたらすぐに思い出した。
「話したいことは山ほどあるけど、とりあえずこれを見てくれる?」
そう言って樋口さんは、目の前のテーブルに白い革表紙のアルバムを置いた。
早く見たい。
でもちょっと緊張する。
逸る気持ちを抑えて、ゆっくりアルバムを開く。
一ページ目には正装の両親の写真が収まっていた。背景はチャペルのようだから、きっと結婚式の写真だろう。