結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 父の着る白いタキシードはちょっぴりサイズが大きいようで、緊張しているのが手に取るようにわかる。ぎこちなく笑っている父の隣で、幸せそうに笑っている母。こんな二人を見るのは初めてだ。

「金がないから、結婚式はぜーんぶ仲間内で手作りしたんだ。幸い映像関係の仕事してる奴らばっかりだったから、衣装や会場は伝手で安く借りて。神父は本物じゃなくて役者だったし。だから、チャペルだけど人前式みたいなことしたんだよ。懐かしいな」

 そのうち私が生まれて、歩き出して、走り回って、転んで泣いて。
 ありふれているけれど、とても幸せそうな家族写真が、たくさんたくさん収められていた。

 多摩川の河川敷でお弁当を広げたとたん雨が降ってきて、慌てて片付けたらすぐに晴れたこと……
 砧公園まで自転車で遊びに行ったが、私は隣接する大蔵運動公園のほうを気に入ってしまい、遊具の中に逃げ込んで帰らないと駄々をこねたこと……

 写真を見ながら思い出話をしていると、まるでここが公園の日だまりみたいに空気が温かくなったような気がした。東梧さんを見上げると、彼は自分のことのように嬉しそうに笑っていた。


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