結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
捨てるもなにも、もう真臣とは付き合っていない。
顔を歪めた真臣が、くっと喉を鳴らしたと思ったら、突然涙をこぼすから呆気にとられた。
「……和咲……好きだ、戻ってきてくれ」
「だめです。和咲さんは、もう僕のものなので」
ここで泣くの? と驚いていたら、それ以上に八木沢さんがすごい台詞を吐くから驚いて言葉をなくした。だが、私も言わなきゃと思って叫んだ。
「そ、そう! この人のものなので! 絶対戻らないから、二度と私に触らないでね!」
八木沢さんの腕を引いて私は階段を駆け下りた。八木沢さんは何も言わずについてきてくれる。真臣が追いかけてくることはなかった。
当てもなく走って、疲れて歩き始めたら東京駅が見えてきた。
東京駅の日本橋口には高層ビルが建ち並んでいる。レトロな駅舎のある丸の内側とはまた雰囲気が違う。ビルの窓ガラスに光が反射して夜空が地上近くにあるみたいだった。
私が立ち止まったら、背後から八木沢さんに名前を呼ばれた。
「和咲さん」
「はい」
「一発、殴ったほうがよかったでしょうか?」
真剣な口調に、思わず笑ってしまった。力が抜けてくらくらしたから、振り返って体を預けた。
そのままの姿勢で、ふわふわと優しく背中を撫でてくれる。安心して、全体重を預けてしまった。
「八木沢さんは殴っちゃだめです。……疲れました、家に帰りたいです」
「うちに、帰りましょう」