結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「寂しいなら一緒に寝ますか?」
「いっしょ……?」
「そう、一緒に」
これまでも、「一緒に寝ますか」って、笑いながら言われたことはある。
冗談だと……思っていた。
でも、今は違う。
八木沢さんの声は穏やかなのに、纏う空気が違っていた。
彼は私の前を横切って、自分が使っている寝室のドアを開いて私を見た。ただそれだけなのに、その仕草が扇情的で、心臓が痛いくらい速くなった。
その視線は私の一挙手を逃さないように観察している。きっと、遊び半分なのか本気なのか見極めようとしている。
「こっちに来る?」
「行きます」
はっきりと私がそう言うと、八木沢さんは目を開いて意外そうな顔をした。
拒否すると思っていたのだろう。
「和咲さん、どういう意味かわかってますか?」
「わかってます」
わかっている。こんな大胆なことできるんだ、と自分でも驚く。
自分の足で歩いて、寝室に踏み込む。
扉を開けたまま八木沢さんが囁くように言った。
「逃げるなら今ですよ」
至近距離で聞こえる優しい声に手が震えてきた。だから、もう一歩、中へ踏み込んだ。
「私、八木沢さんが好きです。仮でいいから一番近くにいて欲しいです。誰よりも近くにいて欲しいです」
私なりの精一杯の告白。八木沢さんがゆっくり扉を閉めた。
後ろから抱きしめられて通告された。
「もう部屋から出しません。覚悟してくださいね」