失くしたあなたの物語、ここにあります
「葵さんだよ。あの日、葵さんは銀一さんと天草農園に来たんだ」
「え……」
「覚えてない? ピンクのワンピースに、白い帽子をかぶってた。恋岩で会った女の子と同じ服を着てた」
懐かしそうに語る彼の言葉が嘘とは思えない。だけれど、沙代子にはその記憶がない。
「……ごめんね。覚えてないの」
「謝ってほしいわけじゃないよ。俺はあれから、天草農園を訪ねてくる葵さんを何回か見かけてたから覚えてるだけで、葵さんが覚えてなくても仕方ないよ」
彼は一方的に知ってるだけなんだと告白した。
父にはいろんな場所に連れていってもらった。その中の一つに天草農園はあったのだろう。
思い出そうと、沙代子は考え込む。言われてみれば、自然に囲まれた中でケーキを食べたことがあるかもしれない。ただそれが、天草農園だったかはわからない。
「葵さんが最後に来たのは、俺が引っ越してくる少し前だったよ。祖母が葵さんに会えなくなるのをしきりに残念がってた。葵さんも引っ越しちゃうんだって、俺も残念に思ったからよく覚えてる」
「……父はあの頃、お世話になったところへ私を連れて挨拶回りしてたの」
「そうだね。疲れて退屈そうに銀一さんに寄りかかってる葵さんを見かけたよ」
「そんなことまで覚えてるの?」
「え……」
「覚えてない? ピンクのワンピースに、白い帽子をかぶってた。恋岩で会った女の子と同じ服を着てた」
懐かしそうに語る彼の言葉が嘘とは思えない。だけれど、沙代子にはその記憶がない。
「……ごめんね。覚えてないの」
「謝ってほしいわけじゃないよ。俺はあれから、天草農園を訪ねてくる葵さんを何回か見かけてたから覚えてるだけで、葵さんが覚えてなくても仕方ないよ」
彼は一方的に知ってるだけなんだと告白した。
父にはいろんな場所に連れていってもらった。その中の一つに天草農園はあったのだろう。
思い出そうと、沙代子は考え込む。言われてみれば、自然に囲まれた中でケーキを食べたことがあるかもしれない。ただそれが、天草農園だったかはわからない。
「葵さんが最後に来たのは、俺が引っ越してくる少し前だったよ。祖母が葵さんに会えなくなるのをしきりに残念がってた。葵さんも引っ越しちゃうんだって、俺も残念に思ったからよく覚えてる」
「……父はあの頃、お世話になったところへ私を連れて挨拶回りしてたの」
「そうだね。疲れて退屈そうに銀一さんに寄りかかってる葵さんを見かけたよ」
「そんなことまで覚えてるの?」