失くしたあなたの物語、ここにあります
 それほど深刻に考えるようなものでもないのだろうか。しかし、うららは明るすぎて危うく感じることがある。何かを隠そうとして明るく振る舞う。そういう経験は、沙代子にもあった。

「藤井さんね、うららちゃんにさけられてたことがあるって言ってたから、何かの勘違いじゃないかなって気になって」

 そう言うと、うららは肩をすくめる。

「勘違いじゃないですよ。さけてたっていうか、遠慮してたんです。渚さんに恋人がいるって思ってたから、会わないようにしてたんです」
「いるって思ってた?」
「はい。本当はいなかったみたいです。なーんだって拍子抜けしちゃった」
「恋人がいたって言ってたの、違ってたんだ?」

 天草さんも意外そうに言う。

 大学時代の藤井さんに恋人がいたと彼が話してくれたのは、ついさっきのことだ。

「うん。いなかったんだって。私、嘘つかれてたみたい。やだよね。ずっと友だちだと思ってたのにさ」

 うららは持ち前の明るさを消してため息をつく。

「藤井さんが嘘ついてたの?」

 よくわからない話だ。首をかしげると、うららはちょっとさみしそうに笑って、

「高校のときの話なんですけど」

 と、ぽつりぽつりと話し始めた。
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