失くしたあなたの物語、ここにあります
「ほんとだ。なんかちょっと無理してる感じじゃない?」
「大人っぽすぎ」
「何それ、ケバいってこと?」

 女の子たちがいじわるそうに口々に言って盛り上がった。

「ちょっと、うらら」

 心配そうにする真樹がうららの肘を小突いた。帰ろうって目配せしてくる。

 ここにいたら、ずっとからかわれる。そう思ったうららも、帰ろうってうなずいた。

 そのときだった。海があの言葉を放ったのは。

「なんで? かわいいじゃん。羨ましがるなよな」

 一瞬、教室がシンと静まった。

 うららは愛ちゃんが冷たい視線を向けてきてるのに気づいて、

 「ごめん。用事があるから先に帰るね。行こっ、真樹」

 と、逃げるように教室を出た。

 心のどこかで、まずいことになったと、それは感じていた。

 だから翌日、机に『人の彼氏をとる女』って書きなぐられたメモ用紙が貼ってあったり、愛ちゃんとその友だちに無視されるようになっても、ショックより、やっぱりって気持ちの方が先に立った。

 その様子を見ていた海が、愛ちゃんに怒ってくれたりしたけど、そんなの逆効果だった。

 そのまま冬休みに入って、大学受験が本格的に始まり、2月にはほとんど学校に行かなくてもよくなって、卒業式を終えた3月には嫌がらせから解放された。

 そうして、大学受験からも解放された3月下旬、うららは真樹とショッピングに出かけた帰り道、駅で海と渚さんに出会った。
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