失くしたあなたの物語、ここにあります
 さらりと告白した真樹の言葉に、うわの空のような返事をした。

 彼女がいてもふしぎじゃない。だけど、いるような気配はなかったから、意外すぎて実感がなかった。

「もう連絡とるの、やめた方がいいよ」

 渚さんが気になってる。その気持ちを真樹に話したことはなかったけど、彼女も薄々勘付いてたんだと思う。

「でも……」
「うらら、高校の時のこと忘れたの? またうらみ買ったら大変だよ」

 それを言われたら、忘れようと思っていた過去がよみがえった。今でも、海に会うと複雑な気持ちにはなる。海は気をつかってか、もしかしたら、忘れてるかもしれないって思うぐらい無関心なだけかもしれないけれど、あのことに触れない。

 だけど、うららが傷つけられた過去は消えない。ミックスも、見ると嫌な記憶を思い出すから手放してしまった。

 あんな思いをするのは、もう二度とごめんだ。

「ね、うらら、渚さんに会うのはもうやめよう?」
「あ……うん、そうだね。そうする」

 うららはそれから渚さんと連絡を取るのをやめた。海にも新しい彼女ができて、兄の連絡先教えるから、これからは直接やりとりしてくれないか? と言われたけど、教えてくれなくていいと断った。

 そうして、渚さんとは疎遠になった。
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