《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!

 白々とした眩しい光に瞬《またた》けば、そこはすでに礼拝堂ではなく聖女見習いの共同部屋で、鏡台の前に座ったユフィリアの髪をステラが櫛で梳かしている。

『ユフィの髪はたっぷりしていて綺麗だから。こうやって結べば……ほぅら。よく似合う……!』

 伸び切ってボサボサだった髪をツインテールに結えてもらったのに、少女は不機嫌そうに「ふい」と下を向いて左右に首を振っている。
 
『鏡を見て? ユフィ。顔を上げて、あなたの可愛い笑顔を見せて?』

 ステラを悲しませまいと無理からに作ったぎこちない微笑みだった。けれど『大好きよ』と優しく笑って、あたたかな胸の中に抱きとめてくれた。
 そっと髪を撫《な》でてくれた手の感触は、八年という歳月を経るうちに薄れつつある。

 別れの時、野花が春風に揺れる教会の花畑でステラは最後の言葉を放った。
 美しい聖女が纏う可憐な純白の聖衣は、まるでひとひらの白い花びらが舞うように揺れていた。

『私はユフィの優しさを知っている。他の誰よりも困っている人たちを救いたいと願ってる。だからこそあなたはそうと知っていてわがままを言うのだし、駄々をこねて叱られてもお勤めを避けようとしている。とても勇気がいることを強い意志と信念で貫いている。私が中央大聖堂《ここ》からいなくなっても、あなたの勇気と優しさを忘れないで……!』




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