《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
ユフィリアが聖女認定を受ける前年、心からの信頼を寄せ、敬愛していた筆頭聖女ステラはその強大なグラシアと治癒能力を買われ、当時は王太子であったアルハンメル国王陛下の側近としてかの国に召された。
『私たち聖女はある意味で奇跡を作り出している。その瞬間、その場所で、もし誰かが手を差し伸べなければ失われてしまったかもしれない命を守るって本当に尊いこと。けれど最後だから本音を言わせて……? 私は自由になりたかった。絵本に描かれた奇跡を信じていたの。ユフィ……お願い。私が叶えられなかったその夢を、あなたに託させて……?』
あんなに悲しいステラの顔を見たのは初めてだった。
いつだって太陽のように微笑んで、凛として誇り高く、神に与えられた聖女という宿命に矜持と気概を持っていたはずの筆頭聖女ステラが──あの日の彼女は、涙ぐみ、まるで世界の終わりを見るような悲壮に暮れた表情《かお》をしていた。
──どうかステラ様がお元気で、数多の人々を救っておられますように。荒んでいた幼い日の私を救ってくださったように。
いつの間にかユフィリアの手には『絵本』が開かれていた。
旅立ちの日にステラから託された、アン・ミカエル・ゴーン著の古びた絵本が。
──あの日から『ステラ姉様の願い』は『私の願い』になった。
「……ん……」
浅いまどろみの中で、ふと頭を撫でられたような感覚があった。
それはどこか懐かしいあたたかさを伴っていて……。
──……ステラ……姉様……?