《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
イザベラ、砕ける。
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『ご主人さま、だいじょうぶ?』
ポメラの背に揺られながら、うっかり船を漕いでいたようだ。
「ああ、ごめん……寝ちゃってた」
ユフィリアは、じゅるっと口元に垂れかけた涎を指先で拭う。
『おそくなっちゃったもんね。落ちないように、気をつけてね〜』
数日ぶりに訪れた貧民街は、《月夜の女神》を待ちわびていた人々で溢れていた。
ちょうど流行病が重なって、怪我人の治癒のあとも方々の家々を巡る事になった。その後も、ポメラが見つけてきた一人暮らしの病人や、怪我人の治癒に翻弄された。
──レオは安静にしておけって言ったけど、あの状況を見たら、そんなお気楽はとても言えなかったはずよ?
来てくれて有難う、月夜の女神様。
先ほど訪れた貧民街で、赤く潤んだ目で微笑んだ少年の顔を思い浮かべると、ユフィリアの頬がおのずと緩む。