《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
レオヴァルトは一度ゆっくりと瞬《またた》いた。
正直、今はとても疲れている。レイモンド卿の非道さに辟易もしている。
加えて、耳に煩いだけの戯言と、あからさまなユフィリアの悪口まで聞かされたのだから、もう平静ではいられない。
「聖女イザベラは、聖騎士ルグランと婚約したんじゃないのか」
「いいえ、していないわ。それに! わたくしはいつでも、常に、自分の伴侶を選べる立場にあるのよ?」
常に、をやたら力を込めて言ったイザベラは、手を伸ばせば届く距離に立つ黒騎士を見上げる。
すらりと伸びた長身。芸術的な肉体美を誇る彫刻のような佇まいに、端正な面差しを乗せたレオヴァルトの横顔に見惚れた。
──彼はわたくしの夫にこそ相応しい。
レイモンド叔父様の考えは知らないけど、能無しのユフィリアはルグランと交わらせればいいのよ。お母様の容態がかかってるって脅せば、あの覚束ないルグランなんかどうだって動く……そもそも元はユフィリアが好いていた男なんだから、逆に感謝してもらいたいくらいだわ。
それでグラシアを増幅させて、ユフィリアだけをアルハンメル国王陛下に差し出せばいい。だって陛下が所望されているのは、戦場でも怯まずグラシアを発揮し続ける、強靭な精神力を持った《聖女》なんだから。これ以上ユフィリアにぴったりな居場所はないじゃない。
ああ、わたくしったら、なんて頭が良いの……!
レオヴァルトの黄金の瞳が、冷酷なまでの鋭い光を宿し、イザベラを射抜いた。