《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
レオヴァルトと謎の《声》
「起きていて良かった。朝食、まだだろう?」
レオヴァルトの片手が持つトレーの上には、柔らかそうなパンが二つと色鮮やかな野菜サラダの盛り合わせ、まだほんのりと湯気の立つスープとナプキン、カトラリーが品よく並んでいる。
「食べてないって、なんでわかったの」
「聖女たちが口を揃えて、怠惰な聖女ユフィリアがまた寝坊して、朝ごはんを食べてないと言っていたから」
──あれほど休めと言ったのに。頑固なユフィリアの事だ、無理を押して貧民街に出向いたのだろう。
ユフィリアの使命感に呆れながらも、冷え切っていたレオヴァルトの心はすっかり温められてしまう。
「やだ、嘘でしょ……」
いや、嘘ではない。
レオヴァルトの話の由来が、先ほどの聖女たちとのやりとりによるものだとユフィリアは知っている。
目の端を柔らかくほころばせるレオヴァルトだが、イザベラと微笑みあっていた姿が眼前をよぎり、ユフィリアは「はっ」と目を逸らせた。
──朝ごはんでお腹を満たして機嫌を取って、婚約破棄の話でも切り出そうって魂胆じゃ……?