《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
「……ごめんね? こんな時に、レオにこんな話しちゃって。でもこんな時だからこそ、ちゃんと伝えておかなきゃって思って」
 
 叶わぬ恋心に身をやつし、自分を抱こうとしている夫を前にして、無謀にも今でもその男を愛しているからあなたは愛せないと涙目で訴える。

 あの派手な髪型も、去勢を張ろうとする姿も。内面に秘めた切なる想いや弱さを隠そうとするためのものなのかも知れない。
 緩やかにウェーブ掛かった銀糸のような長い髪は、今は華奢な背中に流れるように落ちている。
 
「……ッ」

 人目を引く風変わりな髪型に惑わされてしまうものの、生来は整った面差しの綺麗な子なのだ。
 憂いを帯びた蒼い瞳を伏せ、強がりと奔放さの鎧を脱ぎ去った姿は消え入りそうに儚げで美しい。
 レオヴァルトの眼前に座すのは、清廉無垢な輝きを放つ《聖女》だった。

「私との交わりは、あくまでも儀式的なものだと……私にそう割り切れと、言いたいのだな?」

 レオヴァルトの問いかけに、ユフィリアは小さくこくりとうなづく。
 遠い目をするユフィリアを見て、レオヴァルトは腹の底から強い《嫉妬》という感情がふつふつと湧き始めるのを感じていた。

 ──嫉妬心など、欲深く浅ましい者が持つ感情だと卑下していた。なのにこの私が、それも一人の女を巡ってその感情を知るとはな。ますます相手の男がどんな奴なのかが知りたくなる。
 それ以上に、ユフィリアを私のものにしたいと。身体だけではない。心も全て、その男から奪い取ってやりたいと思ってしまう。こんなに激しい情欲や傲慢さが、私の中にも眠っていたのか。




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