恋の微熱に溺れて…
本当は今すぐに教えてしまいたい。好きな人に隠し事なんて俺には向いていないし、そもそも隠し事なんてできない。
でもごめんなさい。絶対にサプライズを成功させたいんです。自分勝手かもしれないですが、今日だけは俺の我儘を突き通すことにした。

「その代わり、今日は…」

言いかけて止めた。自分の愚行に気づいた。サプライズをバラしそうになっていると。
危なかったが、余計に怪しく思われる行動をしてしまった。どうしよう。どう軌道修正をしよう。
慌てふためく心を落ち着かせつつ、言い訳を必死に考える。どう足掻いても余計に怪しさが増すばかりなので、今更もう遅いが…。

「今日は…?」

「いえ。なんでもないです。楽しみに待っててください」

俺は役者に向いていない。芝居が上手くないということだけは分かった。
だから一生、京香さんには嘘をつけない。そもそも嘘をつきたくないし、嘘をつくつもりは端からない。
嘘をついてまで京香さんに自分を良く見せたくない。好きな人を傷つけたくないから、俺は誠実な人間でいたいと思っている。
さすがに俺の全てを受け止めてほしいとまでは言わない。俺は京香さんの全てを受け入れるつもりだが、京香さんにそれを求めてはいけない。少しずつ俺のことを知ってほしい。
でももし、京香さんが受け止めてくれるのであれば、受け止めてほしい。そうなれるように、俺は京香さんにふさわしい人になれるように頑張り続けるのみだ。

「そっか。分かった」

何かを察したのか、京香さんはこれ以上、突っ込んではこなかった。心苦しかったが、この後に待ち受けるサプライズのために、心を鬼にした。
代わりに空気が暗くならないように、俺から新しい話題を振った。
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