恋の微熱に溺れて…
「ここに住んで長いんですけど、近場のイルミネーションに来るのは初めてです」

“近場のイルミネーション”…。つまりイルミネーション自体は初めてではないということになる。
慧くんはモテる。そんな彼が今まで恋人がいたことないなんて有り得ないし、これまでの彼女と行ったことはあるはず。
今更過去に嫉妬して、落ち込んでも仕方がないということは分かってる。
それでも彼の過去の女性に嫉妬せずにはいられなかった。それを表には出さないように心の中で必死に隠した。

「そうなんだ。今までずっと来る機会がなかったの?」

遠回しに昔の女性のことについて聞いてみた。直球に聞けない自分に腹が立つ。

「なかったですね。俺、付き合ってもすぐにフラれちゃうので」

慧くんがフラれるなんて想像できないが、慧くんが嘘をつくなんてことはないと思うので、本当のことなのであろう。

「それは意外…。慧くんがフラれる姿なんて想像できない」

「そんなことないですよ。京香さんだけです。本当の俺を受け入れてくれる人は…」

あまり慧くんの過去の恋愛について深く追求したことはないのでよく知らない。
でも今の話の口ぶりからすると、恋愛で辛い経験をしてきたみたいだ。
どこまで踏み込んでいいのか分からないけど、私だけと言ってくれた言葉が嬉しかった。

「私は慧くんしか知らないし、慧くんが好きだからだよ…」

慧くんみたいに恋愛経験が豊富な方ではない。本当に慧くんしか知らない。
だからというわけではないが、彼のことを真剣に愛しているからこそ、彼にその想いが伝わってほしいと思い、想いをちゃんと伝えた。
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