恋の微熱に溺れて…
「いただきます…、んー…美味しい」

パンを食べた瞬間、優希の表情は一気にパンの虜になっていた。
少し高めの美味しいパンを用意しておいてよかった。友達の笑顔を引き出せのだから。
私も優希に続いてパンを食べることにした。
一口齧った瞬間、いつもの安いパンとの違いを感じた。
まずパンの生地が柔らかく、それでいてパサパサしていないため、食べた時に不快感を感じない。
そしてパンの生地に甘みがあるため、バターを塗っているだけなのに美味しい。
これは迂闊にもう一枚食べてしまいそうだ。それぐらい美味しくて、このパンの虜になってしまった。

「美味しいね。どうしよう、もう一枚食べようかな…」

いつもなら体型を気にして食べ過ぎないように気を付けている。
でも今日はもうダメだ。我慢なんてできない。

「私も食べて大丈夫なら食べたいな…」

優希が食べたらダメなんてことはない。寧ろお客さんなんだから食べてもらいたいくらいだ。

「もちろん。一緒に二人でもう一枚食べよっか」

再びトースターでパンを焼いた。今度はバターを塗らずに。
このパンは何も付けずに食べるのが、パンの美味しさを引き立たせることになるんだと思う。
パンはトースターですぐに焼けるので焼いた。焼いただけでパンの良い香りが漂ってきた。
そのことにさっきは気づけなかった。食べてみてパンの良さに気づいたといった方が正しい。

「焼けたよ。はい、どうぞ」

焼いたパンを差し出すと、すぐに優希はパンを手に取り、食べ始めた。
私もすぐにパンを手に取り、齧りついた。パンの美味しさを知ってしまった今は、食べる手を止められなかった。

「このパン、美味し過ぎる…」

今までパンなら何でも一緒だと思っていた。
お値段が違うだけでこんなにも違いを感じるなんて思ってもみなかった。

「分かる。美味し過ぎるよね…」

人は自分の想像を遥かに超える出来事を目の前にすると、語彙力を失うのだと知った。
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