恋の微熱に溺れて…
「分かった。今回もまたお言葉に甘えるね。でもいつも出してもらうのは悪いから、たまには私にも払わせてね」

私がそう言ったところで、慧くんはきっと首を縦に頷いてはくれないであろう。
それでも一応、私の気持ちは伝えた。少しでもいいから私の気持ちが分かってもらえればいいなと思った。

「分かりました。そうしてほしい時はそうしてもらいますね」

これはどうやら全く納得していない様子だ。
慧くんが頑なに私にお金を払わせたくない理由が、私には理解できなかった。
普通、恋人同士ならお互いに支え合っていける方がいいはず。
どうして彼は私に支えられるのを嫌がるのだろうか。私も彼が大好きだから彼のことを支えたい。
でも私はお付き合いをしたことがないので、何が正しいのか分からない。
ただ私達はお互いにもっと話し合った方が良さそうだ。このままでは良くないということだけは分かった。
でもこの日は黙っておくことにした。これからについて話し合う必要がある時に話そうと決めた。

「うん、分かった。それじゃ今日もよろしくお願いします」

「はい。俺に任せてください。何鍋にしますか?」

私の中で不安が生まれた。本当に彼と同棲していいのか不安になった。


           *


スーパーで買い物を終え、慧くん家へ帰宅。

「お邪魔します…」

今は先程のことは一旦忘れて、慧くんと一緒に過ごす時間を楽しむことにした。

「京香さんはゆっくりソファの上で座って待っていてください」

慧くんにそう言われたので、手洗いうがいをしたら、ソファの上でゆっくり寛ぎながら待った。

「お待たせしました、あとはコンロで温めるだけです」

グツグツ煮込みながら、鍋が煮立つのを待つ。待ちながらやることと言ったら…。

「まずはいっぱいやりましょう。乾杯」

仕事終わりの一杯は格別だ。最近は仕事終わりの一杯のために仕事を頑張っていると言っても過言ではない。
慧くんとお付き合いを始めるようになってから、お酒を飲む量も増えた。
好きな人と一緒に飲むから、自然とお酒も進むのかもしれない。
これからもこうして二人で色んなお酒を飲みたいと思った。
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