恋の微熱に溺れて…
そして数年の月日が経過し、兄貴から突然、紹介したい人がいると言われ、会うことに…。
目の前に現れたのは霞美さんだった。俺の心中は複雑だった。
ずっと忘れられない人が兄貴の彼女として現れたこと。そして兄貴は俺と霞美さんが昔付き合っていたことを知っているか知らないか…。
俺は恋愛をするのが怖くなった。もう恋愛は一生できないと思うくらいに…。
自分から誰かを好きになることはなくなったが、有難いことにそれなりに顔が良かったため、女性の方から寄ってきてもらえることが多かった。
そのため受け身の恋愛しかできなくなり、気が付いたら顔だけのつまらない男になっていた。
顔だけのつまらない男はフラれることが多くなり、誰かと長くお付き合いすることができなかった。
自分でも自分がつまらないと思っていたので、フラれて当然だと納得せざる得なかった。
もうフラれることにも慣れた。それでいいとさえ自分でもそう思っている自分がいた。
いつまで霞美さんに囚われているんだろう。早くこの呪いから解放されたい。
そう思いながらも、臆病な俺は一歩前へ踏み出す勇気が持てずにいた。

鬱々とした日々を過ごしていく中で、俺は大学を卒業し、社会人となった。
社会人になりたての頃の俺は、もう恋愛なんて二度としたくないと思っていた。
でも俺の中で考え方が変わった。それは京香さんとの出会いだ。
京香さんとは新入社員の教育係として知り合った。同じ部署の先輩だったので優しく仕事のことを教えてもらった。
当時から漢字は違えど名字が同じだったので、何かとセットにされることが多かった。
俺は一目見た時から京香さんに惹かれていたが、仕事を教えてもらううちにどんどん惹かれていった。
だからプロジェクトのメンバーに選出された時、チャンスだと思った。このチャンスを絶対に掴むと心に誓った。
紆余曲折あったが、京香さんとお付き合いすることになった。俺は久しぶりの恋愛に完全に浮かれていた。
だからすっかり忘れていた。霞美さんのことを…。それが今回の事態を招いた原因だ。
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