恋の微熱に溺れて…
もし自分が逆の立場でも誤解したと思う。誤解をせざる得ない状況だ。
俺はもう霞美さんを好きな気持ちは微塵もない。兄貴の恋人になった時点で深く関わりを持ちたくないだけだ。
それに京香さんとお付き合いをした段階ですっかり霞美さんの存在を忘れていた。
電話に応じなかったのも必要以上に関わりを持ちたくないだけで。深い意味はなかった。
というのも二人が結婚することは兄貴からちゃんと聞いていた。そもそも兄貴が伝えればいいだけの話なので、霞美さんが俺に伝える必要はない。
霞美さんと義姉弟になりたいとは思う。兄貴のお嫁さんだから。
でも俺と霞美さんはかつて恋人だった。俺としては元カノとどう接したらいいのか分からないというのが本音だ。
兄貴に隠しているのであれば、できれば兄貴にバレないまま一生隠し通したい。
そう思えば思うほど関わりをあまり持ちたくないという気持ちが先行してしまい、逆に怪しまれてしまうわけで。
今回のことで反省した。ちゃんと過去と向き合おうと。じゃないと京香さんに失礼だ。
そして前を向いた上で、兄貴と霞美さんに京香さんを紹介したい。

だからこそ誤解を解きたい。俺には京香さんしかいないのだと伝えたい。
そう思った瞬間、勝手に身体が動き出していた。動き出さずにはいられなかった。
そんな俺を見て、霞美さんは驚いていた。霞美さんに別れを告げられた時は引き止めなかった俺が、今はその恋人のために動き出しているのだから。
でも霞美さんは俺を引き止めようとはしなかった。何かを察したのであろう。
もう俺の中で完全に過去への決着がついた。今は京香さんとの縁が切れないよう、京香さんに電話をかけた。
どこに居るのか今すぐにでも見つけ出して、誤解を解きたい。何ふり構っている時間さえないのであった…。
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