恋の微熱に溺れて…


           *


色々あったが、無事に一緒に住む家も見つかり、今は慧くんと一緒に住んでいる。
まさか家が見つかるよりも先に両家への挨拶を済ませて、婚約関係を結ぶことになるなんて想像すらしていなかった。
少し前に優希とそんな話をしていた時は、こんなにも早く婚約するなんて思ってもみなかったので、優希に報告した時、「よかったね」と言ってもらえて嬉しかった。
ちなみに優希はバレンタインの後、十歳年上の同棲していた彼とは話し合った末に円満にお別れをし、その後すぐに偶然再会した専門学校時代の同期とお付き合いすることになり、その彼と今は同棲中だ。
十歳年上の彼とはお別れすると聞いてはいたが、そんなすぐに次の相手が見つかるなんて思ってもみなかったので、人生何があるか分からないものだなと思った。
そんな優希も新しい彼氏とすぐに婚約を結んだらしく、今度籍を入れると話していた。
恋人がすぐにできただけでも驚いたが、婚約まですぐに結ぶなんて驚きの連続だ。
私達は両家への挨拶は無事に済ませたが、まだ婚約指輪ももらっていないし、籍も入れていない。
まだ今はただの恋人に過ぎず。いつ籍を入れるのか分からないまま、慧くんとの同棲生活を穏やかに過ごしている。

そんなある日の夜。いつも通り仕事を終え、自宅へと帰宅。
今日は金曜日なので華金だ。今この瞬間からお休みだと思うと一気に心が弾む。
週末はどうやって過ごそう。ゆっくりお家で過ごすのも悪くないし、デパートへお買い物しに行くのも悪くない。
良い気分のままリビングへと向かった。

「ただいま…」

先に仕事を終え、帰宅している慧くんに声をかけた。

「お、お帰りなさい、京香さん……」

いつも通り声をかけただけなのに、どこかソワソワしている慧くん。
何かあったのかな?あまり詮索しないでおこうと思い、敢えて触れないでおくことにした。

「今日も疲れたね。すぐに夕飯の支度でもしよっか」

手洗いうがいを済ませてから冷蔵庫の中身をチェックする。残り物は金曜日なので少ないが、その中でなんとか一品作るしかない。

「あの…京香さん。夕飯の支度は今日はもう大丈夫です。俺が準備したので」

準備したとはいえども、料理をした痕跡はない。
それに料理をする時間なんてないほど、慧くんも帰宅したばかりだと思う。
一体、どういうことだろうか。先程からソワソワしているのと何か関係しているのだろうか。

「そうなの?それじゃお風呂を沸かさないとね…」

早くお風呂を沸かして、早くお風呂に入って、あとはゆっくり晩酌をしたい。
そのためにも時間を有効活用し、お風呂を沸かしたいのであった。

「お風呂も待ってください。今から京香さんに大事な話があります…」

大事な話…。この言葉を聞いて、慧くんがソワソワしている理由が分かった。
それが分かった瞬間、私の心臓の高鳴りが加速した。慧くんの言葉の続きを期待している自分がいる…。

「大事な話ね。分かった。まずは慧くんの話を聞くね」

もし想像している話と違ったらどうしよう…。
このタイミングで違う話は有り得ない。違ったら恥ずかしくてこの場から消え去りたいくらいだ。
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