恋の微熱に溺れて…
「…ねぇ、慧くん。今この場で婚姻届を書いてもいいかな?」

落ち着いたタイミングで書いた方がいいのは分かっているが、どうしても今すぐに書きたいと思った。

「いいですね。せっかくですし今書きましょう」

ダイニングテーブルに向かい合って椅子に腰を掛けた。
そしてそのまま婚約届に必要なことを記入していく。
まずは私から名前と住所を書いた。その後、慧くんが名前と住所と必要事項を記入してくれた。

「あとは証人欄だけですね。後日、書いてくれそうな人をお互いに呼んで、書いてもらいましょう」

私が頭の中で思い浮かんだのは優希だ。優希しか友達がいないので、優希以外に頼める人がいないと言った方が正しい。

「分かった。友達に連絡して頼んでみる。きっと快く引き受けてくれると思う」

自分のことのように嬉しそうに引き受けてくれる優希の顔が思い浮かぶ。
早く優希に連絡して頼みたい。そして早く優希に慧くんを紹介したくて仕方がなかった。

「俺も友達に頼んでみようと思います。京香さんを紹介したいですし」

慧くんが友達の話をするのは初めてだ。慧くんの友達がどんな人なのか気になる…。

「楽しみにしてるね。私も友達に慧くんのことを紹介するね」

今までずっと紹介しようと思っていたが、なかなか紹介するタイミングがなく、やっと紹介することができる。
優希もきっと喜んでくれるはず。そして優希の婚約者も紹介してもらえることを願った。

「はい。楽しみにしてますね。これから色々楽しみですね」

「そうだね。色々楽しみだね…」

「今日はご馳走を俺が用意したので、食べましょうか」

どうやらプロポーズだけではなく、ご馳走まで用意してくれたみたいだ。
先程夕飯の準備は大丈夫だと言っていたので、準備してくれているのは知っていたが、まさかご馳走だったとは想像すらしていなかった。

「そうしよっか。ご馳走楽しみ…」

私がそう言うと、慧くんはキッチンからご馳走とお酒を持って戻ってきた。

「さて、せっかくの記念日ですし、二人でお祝いしましょう」

ワインの栓を抜き、グラスに注いでくれた。
注いでくれたグラスを私に渡してくれたので、私はグラスを受け取り、そのまま二人で乾杯を交わした。
ワインは赤ワイン。匂いから高級感が漂っていて。味もいつものワインと違って甘くて美味しい。

「…美味しい」

「奮発したかいがありました。さて料理の方も召し上がってください」

料理は赤ワインに合った料理を用意してくれたみたいだ。
中でもローストビーフが美味しそうだ。早くローストビーフが食べたい。
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