🍞 ブレッド 🍞 ~フィレンツェとニューヨークとパンと恋と夢と未来の物語~【新編集版】
 仕事が終わるや否や、息せき切ってウェスタの店に駆けこんだ。
 電話ではなく直接伝えたかったからだ。

「日本?」

 ウェスタがこれ以上は無理というほど目を見開いた。

「わたしもまだ信じられないの」

 フローラも現実のこととして受け止め切れていなかった。

「ところで、いつから?」

「1週間後」

「えっ!」

 ウェスタが絶句した。
 真っ先に送別会と送別品のことが頭に浮かんだようだが、それを短期間で準備するのは難しいと嘆いた。

「せめて2週間後にしてもらったら?」

「無理よ、仕事なんだから。個人の都合なんて聞いてもらえるわけないじゃない」

「そうか……」

 ウェスタが腕を組んだ。
 考え込んでいるようだった。
 しかしそれに付き合っている暇はなかった。

「とにかく、すぐに準備を始めないと間に合わないから帰るわね」

 ウェスタが何かを言いかけたが、それに構わず踵を返して店をあとにした。

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