🍞 ブレッド 🍞 ~フィレンツェとニューヨークとパンと恋と夢と未来の物語~【新編集版】
 あっという間に出発前日になった。
 日本滞在中に必要となる荷物は送り出していた。
 飛行機に持ち込む荷物もスーツケースとバッグに詰め込み終わっていた。

 あとは……、

 無意識に口から出た言葉が、忘れ物がないかどうかのチェックを促した。

 机を見ると、隅に何かが置かれていた。
 封筒だった。
 忙しくて開封するのを忘れていた。
 消印はニューヨークで、弦からの手紙だった。
 毎週届く手紙だった。
 毎回写真が同封されており、今回もパンを両手に持って得意げな顔をした弦が写っていた。
 両手に持っているパンはグリッシーニとフォカッチャで、どちらもフローラの大好物だった。

 かわいい……、

 思わず呟きが漏れた。
 弦には実の弟のような親近感を持っていた。

 ニューヨークだったら弦と会えたのに……、

 昨年の夏にディナーを囲んだ時のことが蘇った。
 そして、初めて受け取った手紙に住所が書いていなかったことも蘇った。

 おっちょこちょいなんだから……、

 呟きを右手の人差し指に乗せて、写真の中の弦の額にチョンと触れた。
 
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