🍞 ブレッド 🍞 ~フィレンツェとニューヨークとパンと恋と夢と未来の物語~【新編集版】
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「うまくいってるかい?」

 週に一度のお決まり文句をルチオが口にした。
 フローラとの手紙のやり取りのことだった。
 進捗を聞くのを楽しみにしているのだ。
 しかし、いつものようなウキウキした声を返すことができなかった。

「まあまあ……」

 すると、「どうかしたのかい」と覗き込むようにして顔を見られた。

「ちょっと……」

「ふ~ん」

 それ以上突っ込んでこなかったのでほっとしたが、その時、「あっ!」という声が聞こえた。
 見ると、アントニオが床に倒れていた。
 バランスを崩したようだった。
 すぐに助け起こすと、ルチオと奥さんが血相を変えて寄り添った。

「大丈夫ですか」

 アントニオは頷いたが、大丈夫そうではなかった。
 自由の利かない右肘を打ったようだった。
 弦は奥さんと共に抱えるようにして自宅へ連れて行った。

 店に戻って「しばらく休んでもらった方がいいですね」とルチオに声をかけると、「悪いね、迷惑かけて」と頭を下げた。

「迷惑だなんて、そんな……」

 弦は慌てて首を振って仕事に戻った。

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