このドクターに恋してる
　郁巳先生は恐縮する私に対して、フッと口もとを緩める。

「それなりに自分の仕事には誇りを持っているけど、いいことばかりではなくて、辛いこともあるんだよね。なかなか人にはわかってもらえない部分もあって……でも岩見さんなら理解してだろうなと思って、自分のそばにいてくれたらいいなと思ったんだ」

　郁巳先生は「自分のそばに」と言ったとき、自分の胸に手を当てた。心身ともに寄り添ってほしいと言われたように感じた。

「そんなふうに言ってもらえるのは、私……嬉しいんですけど、どう答えたらいいか……すみません、突然のことで気持ちの整理ができなくて」
「大丈夫。さっきも言ったけど、今すぐに返事がほしいんじゃないから。今日は自分のことを知ってもらいたいだけだから、じっくり考えて答えを出してくれたらいい」
「わかりました。ちゃんと考えますので、待ってもらえると助かります」
「うん、待ってる」
「あの、おうちのことや郁巳先生の気持ちを話してくれて、ありがとうございます。私、勝手にこうなんだと勘違いしたり、思い込んでいたので、話してもらえてよかったです」

　郁巳先生は感慨深そうに大きく頷いた。私の戸惑う気持ちを理解してもらえて、よかった。
　自分がどんなことを求めているのか、どうしたいのか、誰と一緒にいたいのか、しっかりと考えよう。
　
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