このドクターに恋してる
 私は郁巳先生の白衣をギュッと握った。
 彼の嫌がることはしたくない。郁巳先生は私が宇部先生のことを考えるのを好ましく思っていなく、食事することもやめてほしいと言った。
 本人も自覚しているように自分勝手な言い分ではあるが、正直に伝えられて、今こうして抱きしめられて、気持ちが高揚した。
 私、郁巳先生にかなり惹かれている……。

 父親以外の家族とは不和である郁巳先生は、これからも家族とのことで不快な思いをすることが何度もあるだろう。
 そんな彼を一番近くで支えたい。
 私にできることはなにもないかもしれないが、心に寄り添い、どんな望みでも叶えてあげたい。
 好きな彼のために。

「郁巳先生、私……えっ?」

 意を決して自分の気持ちを伝えようとしたとき、郁巳先生がグイッと私を自分から放した。

「ごめん、困らせたよね?」
「あ、はい、まあ……」
「陽菜さんは俺のことも圭介のことも考えて返事をくれると言っていたのに、待ちきれなくなって……こんな衝動的なことをしてしまって、申し訳ない」

 郁巳先生は私から距離を取り、項垂れた。私はそんな郁巳先生に近寄り、彼の右手を両手で握る。
 郁巳先生が「えっ?」と驚いた顔で私を見つめた。
< 114 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop