このドクターに恋してる
 宇部先生は早々と入浴を済ませていて、髪が少し濡れているように見えた。

「そんなこと、気にしないで」

 いつもの穏やかな笑顔を向けられて、胸がズキッと痛んだ。
 これから傷つけるようなことを言わなければいけないと思うと、申し訳ない気持ちが心の中に膨らんでいった。

「あの、すみません。メッセージで金曜日のことをキャンセルしちゃって」
「ビックリしたよ。理由を聞いてもいいかな?」

 声は落ち着いているけれど、スマホの画面越しで私を見る視線は鋭かった。
 ちょっと怒っているのかも……。

「理由はあの……宇部先生の気持ちにお応えできなくなったからです」
「俺の気持ち? まだ何も伝えていないけど?」
「そうなんですけど……お互いを知るためのお食事をする予定だったのですけど」
「俺に興味がなくなったということなのかな?」
「ごめんなさい!」

 私は頭を下げてから、おそるおそるスマホを見た。
 宇部先生がため息をつく。

「謝って終わりにできることではないよね? 納得できる理由を聞きたいんだよ?」

 声は変わらず優しいが、苛立っているようで聞いてきたことは厳しいことだった。
 納得できる理由……どうしよう、どう言おう……。
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