このドクターに恋してる
 郁巳さんが首を傾げる。

「どうしてちょっとだけ?」

 郁巳さんは聞きながら、私の持つコップを取り上げた。コップを片付けてくれる郁巳さんを追う。

「だって、酔っ払ったらお風呂に入れないじゃないですか」
「ああ、そうだね。飲酒後の入浴はおすすめできないね。陽菜が言うようにちょっとだけにしよう」

 おすすめできないという言い方が医師らしくて、笑ってしまう。
 聞くと、やはり日頃から健康には気を付けていると言う。
 病院から呼び出しがある場合に備えて、アルコールの摂取は控えめにしているそうだ。

「嬉しいことがあったりとか嫌なことがあったりとかで、羽目を外してしまうことはないんですか?」
「ないな。どうしても、もしものことを考えてしまうから……陽菜、今つまんない男だと思っていない?」

 思いがけない返しに私は慌てた。

「そんなこと、思いませんよ」
「本当に? ちょっと引いた顔しているように見えたけど」
「いえいえ、引き顔ではなく、医師としての誇りを持っていてすごいなと思った感心顔ですよ」
「ははっ、感心顔か」

 郁巳さんが笑ったとき、ちょうど部屋に着いた。
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