このドクターに恋してる
「素敵なお宿でしたね-」
「ああ、また来たいね」
「また来ましょう!」

 チェックアウトして外に出た私たちは振り返って、お辞儀をする女将さんたちに会釈する。
 本当に気持ちのよい旅館だった。郁巳さんとの仲もさらに深まったし、最高の旅行となった。
 夕方、郁巳さんのマンションに戻る。お互いまだ一緒にいたかったので、今夜はこのまま郁巳さんの部屋で過ごすことにした。
 マンションに入ると、コンシェルジュの女性が郁巳さんを呼び止めた。

「浅葉さま、あちらでご家族の方がお待ちになっております」
「家族?」

 郁巳さんは眉をひそめて、あちらと言われたロビーに目を向ける。
 だが、この場所からは待ち人の姿が確認できなかった。
 コンシェルジュにお礼を伝え、ロビーに歩いていく。
 六十代と思われる髪をひとつにまとめた品の良さそうな女性がソファから立ち上がって、腰に手を当てた。

「やっと帰ってきたわね。休みの日はほとんど出掛けないと聞いていたから、近くに買い物かと思ったけど」
「おかあさん、どうしてこちらに?」
「あなたが私の話を聞こうしないから、わざわざ来たのよ。ほら、これがお相手の方の写真。かわいらしい方よ」
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