このドクターに恋してる
 それから二日後、スーツに白衣を着た院長が勤務中の私を訪ねてきた。
 
「岩見陽菜さんはどの方かな? ちょっとお借りしたいんだけど」
「はい、少々お待ちください」

 対応した課長が緊張した声で「岩見さん」と私を呼んだ。

「はい?」
「院長がお呼びだから、すぐに行って」
「えっ、でも、仕事は……」
「いいから、俺がやるから、早く」
「あ、はい」

 課長に背中を押されて、私はドアの近くに立っていた院長のもとに急いで行く。

「岩見です」
「ああ、あなたが岩見さん。仕事中に悪いね。ちょっと来てもらえる?」
「はい」

 どこまで行くのだろうと、院長のあとを追う。途中、院長はすれ違う人たちに挨拶を交わしていた。

「どうぞ、入って」
「はい、失礼いたします」

 たどり着いた場所は院長室だった。私は応接セットのソファに座って、姿勢を正す。
 なんの話がしたくて、ここに連れてきたのだろう……。
 ここ数日消えなかった不安が大きくなった。
 秘書の人がコーヒーをテーブルに置いて、退室する。

「私のことは知ってるかね?」
「もちろんです。浅葉総合病院の院長です」
「それ以外は?」
「はい?」

 それ以外とは……?
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