このドクターに恋してる
 本心を伝えると、院長はコーヒーを飲んで微笑んだ。

「郁巳から聞いているけど、岩見さんは本当に正直者だね。そんな恋人を悲しませたくないと思う郁巳の気持ちは理解できるよ」
「ありがとうございます」
「妻には昨日、絶対に縁談を持ってこないようにときつく言ったから。ただ……」

 表情を曇らせる院長を見て、まだなにか気掛かりなことがあるのかと心配になった。

「ただ、なんでしょうか? お願いします。どんなことでもいいので、話してください」
「悪いね。不安にさせるつもりはないんだけど、岩見さんはいずれ郁巳と結婚したいと思っている?」
「はい、郁巳さんが望むのであれば……私はずっとそばにいたいと思います」
「郁巳がもし院長になったとしても?」
「院長ですか? でも……お兄さんの光一先生は……」

 次期院長になる人は、この病院に勤める者なら誰もが長男の光一先生だと思っている。
 私もそうだったから、郁巳さんが院長になったらと言われて動揺した。
 郁巳さんからは院長になるとも、なりたいとも聞いたことはない。
 院長の父親を尊敬しているとは聞いたが。
 院長は神妙な面持ちで腕を組んだ。
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