プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 莉都花が黙って料理を食べる中、柊仁は特に何かを言うでもなく、他の誰かと話をするでもなく、莉都花の隣で静かにグラスを傾けている。

 莉都花に構っていたってつまらないだろうに、この男は全員の女性と知り合いにでもならないと気が済まないのだろうか。

 軽薄な男の思考など莉都花にはさっぱりわからない。

 柊仁が持ってきた料理はちゃんと食べていることだし、もう莉都花に構う理由もないだろうと、柊仁にさりげなくここからの退席を促す。

「お知り合いのところに戻らなくていいんですか?」
「知り合い?」
「あそこの方たち」

 莉都花は、ビンゴゲームのときに柊仁を囲っていた集団を示した。彼女らは、今は何かの話に花を咲かせているようで、キャッキャと楽しそうにしている。

 柊仁はそれを目に映すと、軽く首を傾げてから、すぐに莉都花に視線を戻した。

「うん? 知り合いじゃないけど?」

 柊仁の返しに、今度は莉都花が首を傾げる。

「え? でも、随分と親しそうに見えましたけど……下の名前で呼び合っていて……」
「さっき自己紹介したからね」
「さっき? え、初対面ってことですか?」
「まあ、俺が忘れてなきゃ、今日初めて会ったかな」
「え!? 初めてであれ……」

 ビンゴのときの光景を思い出して、絶句する。

 どう考えても初対面同士の距離感ではなかった。何ならカップルだと思ったくらいだ。

 どうやらこの男は莉都花の常識からは随分と逸脱しているらしい。そんな男を前にして、莉都花は寒気すら覚える。

 やはりこういう人とはあまり関わりたくない。余計なトラブルに巻き込まれるのも御免だ。

 これ以上変に絡まれる前にこの場から退散しようと、莉都花がそろーっと席を立とうとしたら、タイミングの悪いことに、今最も避けたかった人物がやってきてしまった。
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